「私たちにもカネをよこせ!」三姉妹の本性が現れた遺産相続のゆくえ

「私たちにもカネをよこせ!」三姉妹の本性が現れた遺産相続のゆくえ

SPA! 5/31(金)9:00配信

「兄弟は他人の始まりって言うからね……」

 筆者が遺産分割協議書を作成中に、少しだけ寂しそうな目でそう語った相談者の母親のことは、今でもよく覚えている。

アパートオーナーの息子の相談から始まったバトル

 首都圏中心部で土地や建物を購入するというのは、著名な資産家や事業家によるレアケースであり、所有しているほとんどの人たちは、基本的には先祖代々引き継いでいると考えて問題はないだろう。何も手を打たなければ「親子三代で無くなる」、つまりは「国に没収」されてしまうのが我が国の相続に関する課税制度であり、残っているということは、それをなんとかしてかいくぐってきた努力の賜物であるとも言える。しかし、そんな努力を目の当たりにしていないのが現役の子供世代。

「自分には一体どれだけの資産が回ってくるのか?」

 ただそれだけに意識が集中してしまうのも仕方のないことなのかもしれない。

 不動産業界に身を置く筆者が最初にその家に呼ばれて行ったのは、筆者の勤務先と取り引きのあるアパートオーナーの息子さんから連絡を受けたからだった。彼は女性三姉妹の下に生まれた、いわゆる末っ子長男で、実家の横のアパートの一室に所帯を持って暮らしていた。

 地元から離れたい気持ちもあったらしいが、姉達が嫁いでいった後に親の面倒を誰が見るのかが心配で、隣接したアパートに、少し広めの部屋を作って住むことを選んだ。そしてお母様の体調が優れなくなった折に、身の回りの整理を進めるとともに、自分たちの住むアパートの処分を検討されたとのことだった。

 ちなみに彼自身は、もしもの時は実家に入る(戻る)ことを想定していた。

「親の面倒を見る者は世話代としてアパートの賃料収入が充当される、そして親が亡くなった後は長男がそこに住む」

 ご両親ともご健在だった随分昔に、家族全員が揃った場でこのような話が出て、なんとなく姉弟たちの間で共有されているのだとか。だがこれはあくまでご長男の言い分。裏取りのために他の三姉妹へ確認を入れてみると、これがやはり想定通りの猛反発。バトルの始まりである。

「私たちにも金をよこせ」弟を糾弾する姉たち

 彼女たちがはっきりと提示した言い分は次の通り。

「これまでのものも含めて、アパートの収入を改めて四等分すべし」

「実家の家屋も四等分せよ。住みたければ他の3名に相当の現金を支払うべし」


 ご長男の記憶にあった話については、「そんなことはあり得ない」と三姉妹ともばっさり。女性の場合、嫁いだ先での苦労が多い時代であったため、実家の話なんて自分の意識から抜け落ちていた場合も考えられる。だが自分の懐に入る可能性がある資産が具体化してくると、人はその欲求を抑えきれないのだろう。

 三姉妹はそれぞれ遠方に住んでおり、個別で連絡を取り合うこともほとんどなかったらしい。だが、この話し合いのために久しぶりに集まってもらって驚いたのは、普段からやりとりが無い割には、一致団結して弟(長男)を糾弾していたのである。

 確かに打ち合わせの要点は「長男が実家を(無償で)譲り受けること」と「長男がこれまでに得てきた家賃収入の再分配」であり、バランス的にも長男が矛先にならざるを得ないのは十分分かる。だが、それにしても彼女たちの勢いにはきついものがあった。幼少の頃の序列がそのまま甦ったかのように、姉三人が、金切り声をあげながら末っ子に食って掛かっていたのだ。

 自宅家屋とその敷地、アパート家屋とその敷地及び家賃収入(と管理費用など)をおおまかに並べたうえで、長男側と三姉妹側の要望のすり合わせをするのだが、数回の打ち合わせで終わることはない。それぞれ家庭も仕事もあるため、集まってもらうこと自体難しく、方向性をまとめるのに4ヶ月、最終的な解決までにはおよそ半年ほどの時間を要してしまった。

泥仕合が収束したワケ

 最終的にこのケースがまとまった要因はふたつ。ひとつは、相続自体まだ発生していなかったこと。もうひとつは、無関係な人間が干渉してこなかったことにある。

 被相続人であるお母様は、ご容態が芳しくなく入院が続いていたのだが、わずかながら回復して一時帰宅が可能と聞いた。そこで大鉈を振り下ろしてもらえるように根回しをしておいたのだ。そもそもは全てがお母様の資産なので、それをどう分配するかの決定権者である。あんまり子供たちがわがままを言うようなら、極論としては誰にも譲らずに寄付をするという選択もあり得たので、相続人たちは従わざるを得なかった。

 こうして、ご長男は予定通り実家に入り、アパートについては賃料ごと三姉妹の手に渡るという、ごくシンプルな着地点となった。資産価値としては大きく差が付いているが、先に亡くなったお父様もそう考えていたとお母様の口から出たことも大きかった。この後、生前に正式な手続きで遺言書が作成されて、万が一のときにも揉めることは無くなったのである。

 もうひとつの要因、「無関係な人間」とは相続人たちの配偶者、つまりご長男の奥様、三姉妹の旦那様のことである。相続発生の家の者ではないのだから、そもそも発言する権限はないのだが、通常は最も大きな障害となる。今回は幸運だったとしか言えない。もし、彼女の旦那たちのひとりが、事業経営などで金策がうまく行っていなかった場合は、ここぞとばかりに現金をよこせと口を挟んできただろうし、直接が無理でも嫁である当事者を介して割り込んできたに違いない。

1年以内に、三姉妹それぞれからされた相談内容とは

 今回のように相続問題をこじらせないためには、まずは当事者たちが明るく笑って話せるうちに話題に挙げてまとめておくことに尽きる。相続の話をすると、親の側=被相続人側は「そんなに揉めるほど持っていないから」と話をそらしがちなのだが、持っていないゆえに争うケースを筆者は知っている。50万円の争奪戦に、100万円以上かけて法廷で戦うことがあるのが人間なのだ。

 だから、随分と浸透している「終活」をぜひとも検討して欲しい。子供の側=相続人側に話を振ると「縁起でもないことを言うな」と怒って止められてしまうことが多い。既にお身体のどこかを悪くされていたならなおさらだ。

 だったら、正月や盆休みに家族が集まる機会にでも、「あなたのいなくなった後のことはどう考えているか」くらいは話を振ってみてはいかがだろうか。待ってましたとばかりに自分の胸のうちを明かしてくれるかもしれないし、初めて聞く何かがあるかもしれない。いざという時に備えるとはこういうことだ。

 本人不在の遺産分割は本当に泥仕合になりやすい。誰もが、感情的になって論理破綻しながら罵りあうリスクを秘めている。仲の良かった兄弟であっても、それは何の抑止力にもならない。それよりも事前の準備を怠らないことだと、筆者は提案したいのだ。

 なお、先ほどのケースの後日談。話がまとまった1年以内に、なんと三姉妹のそれぞれから個別で相談の連絡を受けた。

「3人で相続するアパートを“独り占め”する方法ってありますか?」
<文/古川博之進>

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190531-01576389-sspa-soci&p=1

 最後の一行が非常に怖いお話ですが、筆者さんがおっしゃる通り、 自分の懐に入る可能性がある資産が具体化してくると、人はその欲求を抑えきれないのかも知れませんね。

 私はいつも考えるのですが、最終的にこのような結果を招く前に、やはり自らの相続の事を考えて、少しでも早く相続の準備をすることをお勧めいたします。

ご不明な点があれば、お気軽に福岡市東区の香椎相続不動産事務所へお気軽にご相談ください。

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