デジタル遺言改正案、閣議決定。
「スマホで遺言」が実現するまでに知っておくべきこと
― 「閣議決定=すぐ使える」ではない。制度の現在地を正確に理解する ―
2026年4月3日、パソコンやスマートフォンで遺言書を作成できる新しい方式「保管証書遺言(デジタル遺言)」の創設を含む民法改正案が閣議決定されました。しかしこれは閣議決定の段階であり、国会での成立・施行には至っていません。現時点でパソコンやスマホで作成したデータ形式の遺言書は法的効力を持ちません。デジタル遺言をめぐる制度の現在地と、今実際に取れる行動を整理します。
この記事を読むと得られること(FAQ)
遺言書のデジタル化:何が変わり、何がまだ変わっていないか
遺言書のデジタル化は段階的に進んでいます。2026年4月現在の状況を時系列で整理すると、すでに施行済みのものと、まだ施行前のものが混在しています。
施行済
施行済
閣議決定
未定
現時点でパソコン・スマホで作成したデータ形式の遺言書は、民法上の効力がありません。民法968条は自筆証書遺言について「遺言者が全文・日付・氏名を自書し、印を押さなければならない」と定めており、タイピング入力はこの「自書」要件を満たさないと解釈されています。「デジタル遺言が閣議決定された」というニュースを見て、今すぐスマホで遺言を作っても、それは法的に無効な文書です。
保管証書遺言(デジタル遺言)の仕組みと注意点
閣議決定された改正案によれば、新しい「保管証書遺言」は次のような流れで成立する見込みとされています。なお、詳細な手続きは法案成立後の省令等で定められる予定であり、変更の可能性があります。
保管証書遺言の手続き(閣議決定内容に基づく見込み)
| ステップ | 内容(見込み) |
|---|---|
| ①作成 | パソコン・スマホ等で遺言の全文を作成する(手書き不要の見込み) |
| ②電子署名 | マイナンバーカード等を使った電子署名の付与が見込まれている(詳細は省令待ち) |
| ③本人確認・口述 | 法務局の遺言書保管官の面前(対面またはウェブ会議)で、遺言の全文を口述する |
| ④保管申請 | 法務局に保管申請を行い、保管が完了すると遺言が効力を生じる見込み |
「全文の口述」が実務上の大きなハードルとなる見込みです。単に「はい」と確認するだけでは足りず、遺言の内容全体を自ら読み上げる必要があるとされています。高齢の方・発声に不安のある方にとっては大きな負担となる可能性があります。一方、公正証書遺言は公証人が文章を読み聞かせ、本人は「承認します」と答えるだけで済むため、口述の負担は大幅に軽減されます。
3つの遺言方式を比較する:今選ぶべきはどれか
| 項目 | 自筆証書遺言 (法務局保管) |
公正証書遺言 (ウェブ作成可) |
保管証書遺言 (未施行・見込み) |
|---|---|---|---|
| 手書き | 必要(全文・日付・氏名) | 不要 | 不要(見込み) |
| 費用 | 保管料3,900円 | 公証人手数料(財産額による) | 未定 |
| 検認 | 不要(法務局保管の場合) | 不要 | 不要(見込み) |
| 専門家関与 | 不要(内容は自己責任) | 公証人が関与・内容確認あり | 保管官が関与(範囲は省令次第) |
| 今すぐ使えるか | ○ | ○(ウェブ対応も可) | ✕(未施行) |
「待つ」か「今動く」か:制度を待つリスク
「デジタル遺言が使えるようになるまで待とう」という選択は、一見合理的に見えます。しかしこの待ちの姿勢には、見落としがちなリスクがあります。
施行時期は現時点で未定です。一部報道では「2028年度中」との見込みが伝えられていますが、法務省の公式見通しではなく確定情報ではありません。その間に健康状態が変わったり、判断能力が低下したりすれば、いかなる遺言方式でも作成が難しくなります。制度が整う前に、判断能力がある「今」こそが準備の最善のタイミングです。
現行の制度で今すぐ準備できる選択肢として、法務省の自筆証書遺言書保管制度(保管料3,900円・検認不要)か、公正証書遺言(ウェブ面談対応)があります。保管証書遺言が施行された後に切り替えることも可能です。
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民間で提供されている「デジタル遺言サービス」は、現時点では民法上の法的効力を持ちません。エンディングノートの電子版・意思整理ツールとして活用することは有効ですが、法的に有効な遺言書の代替にはなりません。法改正成立・施行まで、この点は変わりません。
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