「相続放棄の誓約書」は法的に無効
——親が残した「準備不足」が兄弟を壊す理由
― 問題の根はどこにあるのか ―
「独身だから相続はいらないよね」——こう言われて誓約書にサインさせられた姉が、相続発生後に法定相続分を主張したことで弟と深刻な対立に発展した。そのような事例が実際に起きています。相続発生前の「相続放棄の誓約書」は法的に無効です(民法第938条)。しかしこの問題の本質は、無効な誓約書を書かせた弟の行動だけにあるのではありません。二人しかいない兄弟をそのような状況に置いてしまった親の生前準備の不足こそが、問題の根にあると考えます。
この記事を読むと得られること(FAQ)
「事前の相続放棄」が無効である理由:法律の構造
相続放棄は、相続の開始後に家庭裁判所への申述によって行う手続きです(民法第938条)。相続が開始される前——つまり被相続人がまだ生きているうちに——「相続しない」と約束しても、それは法的な相続放棄とはなりません。
この制度設計には理由があります。相続放棄は相続人の重大な権利の放棄であり、その判断は相続発生後に財産の全体像が明らかになった時点で、本人が冷静に行うことが前提とされています。生前に圧力や誤解のもとで署名させられた書類が有効となれば、相続人の権利が不当に奪われる恐れがあるためです。
「サインしたから権利がない」は誤りです。「相続放棄の誓約書」「相続しない旨の念書」「遺産は不要という覚書」——いずれの名称であっても、相続発生前に作成されたものは法的拘束力を持ちません。相続発生後に正式な手続きを経て法定相続分を主張することは、法律上可能です。ただし実際にどう対応するかは弁護士等の専門家への相談をお勧めします。
問題の根はどこにあるのか:親の責任という視点
このようなトラブルを見聞きするとき、つい「無効な誓約書を書かせた側の問題」という見方になりがちです。もちろんその点は否定できません。しかし相続コンサルタントとして多くの現場に関わってきた経験から言えば、問題の根はもっと手前にあります。
二人しかいない兄弟が、親の相続をきっかけにこのような状態になってしまう背景には、親が生前に「どう分けるか」を明確にしなかったという事実があります。「子どもたちが仲良く話し合えるだろう」という前提は、残念ながら相続の現実においてはしばしば崩れます。
「子どもたちに任せる」が生む構造的な対立
遺言書がない場合、相続発生後には遺産分割協議が必要となります。これは相続人全員が合意しなければ成立しません。合意に至らなければ家庭裁判所での調停・審判という手続きに発展します。
この「話し合い」の場に、各相続人は自分の利益を持って臨みます。普段は兄弟として良好な関係であっても、数千万円・数億円の財産を前にした話し合いは、通常の会話とはまったく異なる緊張をはらみます。親が「任せる」と思って残した白紙の状態が、その緊張の舞台になります。
「独身だから相続は不要」という前提の危うさ
「独身だから財産は必要ないでしょ」「結婚している子の方が生活費がかかる」——こうした論理で相続の配分を口頭で決めようとするケースがあります。しかしこの前提には問題があります。
独身であることは、その人の将来の経済的な必要性を担保しません。老後の医療費・介護費・住まいの確保——独身の子どもが抱える将来のリスクは、既婚の子どもとは異なる形で存在します。「独身だから少なくていい」という論理は、相続人としての権利を否定する根拠にはなりません。
生前にできること:「任せる」ではなく「決めておく」
相続放棄の正式な手続き・申述の方法・期限(相続開始を知った日から3か月以内)については裁判所の相続放棄の申述に関するページでご確認いただけます。相続発生後に放棄を検討している場合は、期限に注意して早めに弁護士・司法書士に相談することをお勧めします。
「準備しなかった」ことのコストは、子どもが払う
福岡市東区・香椎エリアでも、「兄弟で話がまとまらない」「親の遺言書がなかったために分割協議が難航している」というご相談が増えています。多くのケースに共通しているのは、親が生前に何も決めていなかったという事実です。
相続の準備は「自分のため」ではなく「残される家族のため」にするものです。香椎相続不動産事務所では、相続コンサルティングの一環として、遺言書の設計・財産の整理・家族への意思の伝え方まで、一体的にご支援しています。「まだ早い」と思っているうちが、最も準備しやすい時期です。まずはお問い合わせ・無料相談から始めてみてください。
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