「相続時精算課税制度」の見直しについて

贈与と相続の書類が並ぶデスク・相続時精算課税制度の見直しを考えるイメージ

「相続時精算課税制度」の見直しについて
― 使いやすくなった制度の「構造」を正しく理解する ―

「相続時精算課税制度が使いやすくなった」という情報を耳にした方も多いでしょう。2024年1月1日以後の贈与から、この制度に年110万円の基礎控除が新設され、活用の幅が広がりました。しかし、「使いやすくなった=誰にでも有利」ではありません。制度の構造と限界を正確に理解しないまま選択すると、取り返しのつかない結果になる可能性があります。

この記事を読むと得られること(FAQ)

Q. 相続時精算課税制度の改正で何が変わりましたか?
A. 2024年1月1日以後の贈与から、年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以内の贈与は相続時に持ち戻す必要がなく、贈与税の申告も不要です。また暦年贈与の7年ルールの対象外であるため、相続直前の贈与にも対応できるようになりました。
Q. 一度この制度を選ぶと戻れないというのは本当ですか?
A. 本当です。特定の贈与者について相続時精算課税制度を選択すると、その後は同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことはできません。この不可逆性は制度の最大の注意点であり、長期的な資産戦略に直結する選択です。
Q. 誰でも使える制度ですか?
A. 利用できるのは、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母から、同じく1月1日時点で18歳以上の子・孫への贈与に限られます。また、制度の適用可否や税負担は財産の種類や家族構成によって大きく変わるため、専門家への確認が不可欠です。

まず押さえるべき「制度の基本構造」

相続時精算課税制度は、生前に最大2,500万円まで贈与税なしで贈与でき、その後相続が発生したときに贈与財産を相続財産に合算して相続税を計算する仕組みです。つまり「贈与税の支払いを相続時に先送りにする制度」が基本的な性質です。

2024年1月1日以後の贈与から新設された年110万円の基礎控除は、この先送りの枠の外に「非課税で移せる枠」を設けたものです。この110万円以内の贈与は、贈与税の申告も不要で、相続時の加算も不要です。

  • 贈与者の要件:贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母
  • 受贈者の要件:贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子・孫
  • 特別控除:累計2,500万円まで贈与税がかからない(超過分は一律20%課税)
  • 新設基礎控除(2024年1月1日以後の贈与から適用):年110万円以内は持ち戻し不要・申告不要
  • 選択届出書の提出期限:最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
  • 選択は贈与者ごと:父・母それぞれについて異なる課税方式を選べる

改正で広がった4つの活用可能性

活用 1
年110万円が確実に非課税で移せる
改正前は「すべての贈与が相続時に持ち戻される」ことがネックでした。新設の基礎控除により、年110万円以内であれば贈与税の申告も不要で、相続財産への加算も不要になりました。確実に資産を移転できる枠として活用できます。
活用 2
財産の評価額を「贈与時」に固定できる
相続時には「贈与時の価格」で相続税が計算されます。将来値上がりが見込まれる自社株・不動産などは、低い評価額のうちに贈与することで相続税を抑えられる可能性があります。ただし値下がり時も贈与時の価格で課税されるため、見極めが重要です。
活用 3
相続直前の「駆け込み贈与」に対応できる
暦年課税の「7年ルール」では相続直前の贈与が相続財産に加算されますが、相続時精算課税の基礎控除(110万円以内)はこのルールの対象外です。相続リスクが高まった場合でも柔軟な資産移転が可能になりました。
活用 4
生前の資産分配で相続トラブルを防ぐ
誰に何を渡すかを生前に整理することで、相続発生後の遺産分割トラブルを防ぐ効果があります。特に分割しにくい不動産や自社株は、生前に整理しておくことが重要です。

「ハイブリッド贈与」という選択肢

贈与税の課税方式は贈与者ごとに選択できるため、父と母で異なる制度を使うことができます。これを組み合わせると、年間220万円まで非課税での贈与が可能になります。

贈与者 課税方式 非課税枠 注意点
相続時精算課税 年110万円(持ち戻し不要) 一度選ぶと変更不可
暦年課税 年110万円(通常の非課税枠) 7年ルールが適用される

母からの暦年贈与には「7年ルール」が引き続き適用されます。相続開始前7年以内(段階的に適用)の贈与は相続財産に加算されます。制度の”いいとこ取り”をするためには、両制度のルールの違いを正確に理解することが前提です。

「使いやすくなった」が招く3つの落とし穴

1
一度選ぶと「片道切符」——暦年課税には戻れない
特定の贈与者について相続時精算課税制度を選択すると、その後は同じ贈与者からの贈与について暦年課税に変更することは一切できません。「やっぱり暦年の方が有利だった」と気づいても手遅れです。この選択は長期的な資産戦略に直結するため、安易な判断は避けるべきです。
2
申告・届出には期限があり、期限内の対応が必要
制度を選択する際の届出書は、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに提出する必要があります。また基礎控除(110万円)を超える贈与があった場合は、翌年3月15日までに申告が必要です。申告・届出の期限と内容は制度ごとに異なるため、事前に専門家と確認しておくことが重要です。
3
小規模宅地等の特例や納税資金対策に影響が出る場合がある
相続時精算課税制度を使って土地を贈与した場合、状況によっては小規模宅地等の特例の適用に影響が出る場合があります。特例は最大80%の評価減が見込める制度であるため、贈与前に試算を行うことが不可欠です。また納税資金対策など、他の税務上の論点にも影響する場合があるため、個別に専門家へ確認することをお勧めします。

制度の適用可否や税負担は、財産の種類・家族構成・贈与のタイミングによって大きく変わります。「節税になる」「使った方がいい」という判断は、個別の試算なしには下せません。特に不動産を贈与する際は、登録免許税(贈与時2.0%・相続時0.4%)や不動産取得税も発生するため、総合的なコスト比較が必要です。

「節税になるかどうか」より先に問うべきこと

相続時精算課税制度は基本的に「税金の先送り」の仕組みです。節税効果が生まれるのは、贈与時の評価額が相続時より低い場合や、相続財産全体が基礎控除の範囲内に収まる場合など、特定の条件が揃ったときに限られます。

この制度を選ぶべきかどうかは、「今、節税になるか」ではなく、「将来の相続全体を見渡したとき、家族にとって最善の資産の流れになるか」で判断すべき問題です。

福岡市東区・香椎エリアでも、地価の上昇によって不動産の評価額が想定以上に高くなっているご家庭が増えています。「節税になりそうだから」という入口の判断だけで相続時精算課税制度を選ぶことは、他の制度との兼ね合いや将来の申告・届出の手間を見落とすことにつながりかねません。

相続税は、関与する税理士によって結果が変わると言われています。メリットとデメリットを正しく理解したうえで、ご自身の状況に合わせた判断を専門家とともに行うことが、最も確実な準備です。

香椎相続不動産事務所では、相続コンサルティング・遺言書作成・相続不動産活用をご支援するとともに、相続時精算課税制度の活用を含む生前対策について、相続専門の提携税理士をご紹介することが可能です。福岡市・糟屋郡エリアを中心に、初回相談無料でご対応しています。

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香椎相続不動産事務所では初回相談無料でご対応しています。
福岡市東区香椎2丁目8-4|相続コンサルティング・遺言書作成・相続不動産活用

TEL: 092-202-2300

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本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。相続時精算課税制度の基礎控除新設(年110万円)は2024年1月1日以後の贈与から適用されています。法律・税制は改正される場合があります。小規模宅地等の特例・暦年贈与の7年ルール・申告期限・届出期限など、個別の適用要件は財産の種類・家族構成・贈与のタイミングによって異なります。記事内の情報はあくまで参考としてお読みいただき、具体的なご判断の際は必ず専門家へのご相談をお願いいたします。

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