遺言書の取り扱い方法について

遺言書の取り扱い方法について

相続の遺産分割の際には、被相続人の遺志が書かれた遺言書に従うことが基本となります。どんな財産があり、何を誰にどう相続するのかについて、遺言書がある場合は、その指示に従わなければいけません。とは言いながら、そもそも被相続人が遺言書を遺していないことも多々あります。また遺言書の存在を相続人に明らかにしていない場合もあります。今回は遺言書の取り扱い方法について記します。

遺言書の役割について

遺言には被相続人の遺志が反映されているわけですが、その役割について以下の通りとなります。

相続と遺産分割について

  1. 分割方法の指定・・・法定相続分とは無関係に、誰にどの財産をどのくらいの割合で相続させるのかを決定する。
  2. 分割を禁止する・・・遺産の分割を行う事を、最長5年間禁止することができる。
  3. 特別受益を免除する・・・生前贈与分を相続分と合算して考える特別受益と、計算しないように指定できる。
  4. 相続権の剥奪や相続人の指定・・・相続人から相続権を取り上げたり、それを取り戻したりすることができる。
  5. 遺言執行者の指定・・・遺言に従って、相続を行う執行者(弁護士や信託銀行など含む)を指定できる。
  6. 祭祀財産の承継者指定・・・墓や仏壇など、祭祀に関わる財産を誰が管理し、承継していくのかを指定することができる。

財産の処分法について

  1. 相続人以外への相続・・・法定相続人以外であっても、自分の財産を相続できるように指定することができる。
  2. 金融機関への信託・・・特定の金融機関などに財産を預けて、管理や運用について任せることができる。
  3. 寄付の希望・・・財産を相続人たちに相続するのでなく、希望する人や団体に寄付するように指定することができる。

子どもや相続人について

  1. 後見人の指定・・・相続人が未成年の場合の後見人や、その人物に問題がないか監督する人を指定することができる。
  2. 子どもの認知・・・内縁の関係の子どもなど、亡くなったあとに遺言書で子どもとして認知することができる。

遺言書の捜索について

まずは遺言書の有無を確認するのですが、遺言書がどこに保管しているのか、そもそも本当に遺言書があるのか分からない以上、遺言書の捜索は本当に簡単なことではありません。まずは相続人を特定と並行して、遺言書が保管されているようなところを、くまなく探していかなければなりませんが、2020年7月1日より法務局における遺言書の保管制度が施行されます。このような制度も活用することをお勧めします。
もちろん遺言書がなくても遺産相続は可能ですが、遺言書がある方がスムーズに相続手続きを進めることができるため、遺産相続のためには遺言書の存在を確認することが大切です。
遺言書には自筆証書遺言(自筆証書遺言の書き方)、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、これらはそれぞれ形式や作り方が違います。詳細は改めて記しますが、この違いは被相続人が遺言書を記す場合に注意すべき点となります。しかし相続人にとっても捜索方法や確認方法で注意すべき点となります。

3種類の遺言書の捜索方法と注意点

自筆証書遺言の場合、被相続人は遺産分割の内容だけでなく、遺言書を遺しているという事実すら誰にも明かすことなく作成し、自分の思いついた場所に保管しておくことができます。そのために、相続人たちは遺言書があるのかを確かめて、存在するのかを捜索するところから始めなければなりません。相続人にとって非常に大変なケースです。
自分で保管できるということで、まずは被相続人の身の回りに保管している可能性があるので、自室の机の中や、仏壇や本棚の本と本の間などくまなく探しましょう。過去には女性の方が台所の引き出しの中に入れていた事例もあります。男性はなかなか隅々まで見ることのない場所ですね。また人によっては、信頼できる知人や友人に預けていたり、自分以外は手を出せない、銀行の貸金庫に預けていたりする可能性もあります。心当たりがあれば一つ一つ丁寧に確認しておきましょう。
また、相続人が自筆証書遺言を発見したとしても、すぐに開封してはいけません。封筒内の遺言書がすり替えられている、記載の内容を相続人の一人が記載事項に手を加えている可能性も否定できません。未開封のまま家庭裁判所へ持って行き、「家事審判申立書」で遺言の検認を受けます。その結果、自筆証書遺言として問題がないと認められれば、「自筆証書遺言検認済証明書」を受け取る事が出来ます。

秘密証書遺言の場合も、自筆証書遺言と捜索方法や手続きは変わりません。被相続人が自ら記入し、誰にも保管場所を知らせず、内容も公開していないので、裁判所の検認は必要となります。
また自筆証書遺言や秘密証書遺言は、専門家が内容を確認して作成したわけではないので、内容に不備のある可能性があります。もちろん本人の遺志は確認できるので、その遺志を元に相続人同士で遺産分割協議を進めることは可能ですが、遺言に不備がある場合には、法的な有効性はありません。
自筆証書遺言と秘密証書遺言を元に相続を行う場合、遺言書は遺産分割の内容を証明する書類として、検認証明書と共に取り扱いされます。検認証明書があってはじめて遺言が法的に認められ効果をもつのです。
秘密証書遺言は公証役場で作成されてはいますが、内容は誰にも知らされていません。しかし、遺言を作成した記録は残っているため、作成した記録の検索は可能です。検索を依頼するには、相続人であることを証明する書類と本人確認の証明書類が必要ですが、どうしても遺言書が見つからない場合、念のために遺言の有無を確認しておくことをお勧めします。

一方、公正証書遺言は、公証役場で専門家の確認によって書かれているため、不備の心配はありません。被相続人からこの方式で遺言書を残していると知らされた場合は、その原本がどこの公証役場に保管されているのか、写しを保管しているのかを確認しておきます。また公正証書遺言であれば、公証役場には原本を記入記録が残っているので、検索すれば中身まで確認することが可能です。

遺言に不服があれば申し立てを

遺言書を発見して、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、家庭裁判所の検認を受けて、遺言書の中身を確認したら、基本的には被相続人の遺志であるその内容通りに相続を進めていくことになります。とは言いながら、相続に必要な各種手続きや財産の調査など何をすればよいのか分からない人も多いとと思われますので、まずは遺言執行者を決定します。
これは、被相続人が遺した遺言を元に、専門知識をもってその内容を実現、実行する人物となります。遺言に付き合いのある弁護士や相続人で話をまとめる能力のある人を指名するのが一般的ですが、執行者の指定がない場合は、家庭裁判所に専任してもらうことも出来ます。
遺言執行者なども関わって遺言の実行にむけて動くわけですが、とは言え全て実行可能かといえば難しい話もあると思います。
例えば兄弟の一人に全ての財産を相続されていると書かれていれば、その他の兄弟や、その配偶者は不公平感を感じ、不信感や不満を抱く可能性が多々あると思います。この不平等感を解消するため、直系親族である被相続人の配偶者や子ども、父母には最低限の相続権である遺留分というものが定められています。
この遺留分の請求にも手続きが必要であり、請求の期間にも一定の期限が設けられているので注意が必要です。

遺言書が残っている場合、以上のような手続きで遺産相続を進めていくことになりますが、いずれにしても非常に大変な労力が必要となります。しかしながら、遺言の有無は相続の手続きにおいて、非常に有効なものとなりますので、被相続人としては遺言の準備、相続人としては、被相続人の遺言の有無だけはしっかりと確認をしておきましょう。遺言についてご不明な点があれば、福岡市東区の香椎相続不動産事務所へお気軽にご相談ください。

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