相続登記を自分でやってみる

相続登記を自分でやってみる

先日の相続相談会の際に、相続登記についてお尋ねがあったのですが、その内容としては、自分で相続登記がしたいので、必要な書類を教えて欲しい、今日必要と思われる書類を持参しているのでチェックしてもらえませんかとの依頼でした。
残念ながら、私の回答としては、「司法書士への相談か、若しくは法務局の登記相談を利用して頂くのが、正確で確実な回答を頂けると思います。 」とお答えさせて頂いたのですが 、今回はどうしても自分で相続登記をしたいという方のために、以下に記したいと思いますが、かなり煩雑で手続きと必要書類と時間が必要となります。司法書士さんへお見積りを依頼した上で、それでも自分で相続登記するか検討してみてください。
自身での相続登記については、一度必ず法務局の登記相談をご利用ください。

相続登記とは

相続登記とは、不動産を相続した人が、不動産の名義を被相続人の名義から相続人へと変更する手続きを法務局に対して行うものです。この手続きを行うことで相続財産が相続人の所有であることを法務局で登記されます。
ちなみに相続登記の手続きは必ずやらないといけない義務ではありません。しかしそのまま被相続人の名義にしておくと、後々のトラブルとなります。
●相続した不動産を売却できない
・不動産の名義が被相続人の名義のままでは、不動産の売買ができません、またその不動産を有効に活用しようとしても、難しい場合があります。
●時間が経てば手続きが大変に
・個人名義のままで放置して、さらに相続人が死亡した場合、さらに利害関係者である相続人が増えることになります。数十年後にその不動産を相続登記しようとすると、多くの人の意見で相続登記が難航することが予想されます。

相続登記は概ね3つのどれか

相続登記は概ね3つのパターンに分かれます。
①遺産分割協議通りに相続登記
②遺言の内容通りに相続登記
③法定相続分通りに相続登記

遺産分割協議通りに相続登記
最も多いのは、複数人いると思われる相続人たちで、相続人同士で遺産分割協議を行い、被相続人の所有していた不動産を誰が相続するのか決めて遺産分割協議書を作成した上で相続登記を行います
このようなケースの場合、相続人同士の意見が違う場合、遺産分割協議が難航して相続登記が難しくなる可能性があります。もちろん相続人がひとりだけの場合は遺産分割協議は不要です。
遺産分割協議の内容な相続人間で合意すれば分け方も内容も自由ですので、必ずしも法定相続通りの内容で分割しなくても問題ありません。ただし一つの不動産を複数の相続人で所有する、いわゆる「共有」する際は、その不動産を売却や改築や解体、賃貸など何をするにも共有者の同意が必要となり、大きな制限を受けてしまう可能性があります。更に共有者同士は仲良く共有に合意したとしても、その後の相続が発生した際に揉め事に発展する可能性がありますので、相続不動産を共有で相続登記する際には十分な注意と検討をして頂いて、可能であれば換価分割や代償分割など、なるべく共有での相続登記は避けるをお勧めいたします。

遺言の内容通りに相続登記
遺言がある場合は、基本的に遺産分割協議が不要となりますので、手続きは簡単になります。遺言があれば、遺言以外の分割方法で法定相続人が合意しない限り、遺言通りの内容になるので、争う余地がなくなるためです。これが相続に関わる専門家たちが、生前に遺言の準備をお勧めする最大の理由です。
先ほど書きましたが、遺言があれば、必ず遺言の内容の通りに相続しなければならないわけではありません。相続人同士で同意があれば、遺産分割協議の方法で相続割合なども自由に決めることができます。遺産分割協議との違いは、ひとりでも相続人の遺言のとおりに相続したいと主張すれば、遺言が優先される点です。法務局へも遺言を提出すれば、遺言の内容に従って相続登記が行われますので、手続きが簡単です。

法定相続分通りに相続登記
最後になりますが、法定相続分通りに登記をすれば、必ずしも遺産分割協議は必要ありません。たとえば、相続人同士が遺産分割の割合で揉めていて、話し合いで解決しない場合には、法定相続分通りの相続登記の申請であれば、相続人のうちの一人が単独でも可能となります。
ただし、遺産分割協議が難航した上で、法定相続分での相続登記は、のちのち大きな問題になる可能性があるのは、みなさんも容易に想像できると思います。今もめている相続問題は時間は解決してくれません。時間が経てば経つほど話は難しくなり、相続した不動産の活用が難しくなります。
相続人同士の関係が非常に良好で、登記後すぐに不動産を売却などする予定で、換価した現金をすぐに法定相続分に分配するなど決まっていれば、法定相続分での相続登記でも良いと思われますが、やはり念のために相続人同士で、一筆残しておくのをお勧めいたします。

相続登記の手続きにかかる費用

実際に不動産の相続登記を行う際に最も気になるのは、必要な諸費用だと思いますが、ここでは相続登記にかかる費用をすべて紹介します。

●登録免許税(必ず必要な費用です)
相続登記をする際には必ず登録免許税という税金が発生します。登録免許税は郵便局などで収入印紙を購入して、その収入印紙を登記申請書に貼付して納めます。
登録免許税の計算=不動産の固定資産税評価額×0.4%
(1,000円未満の端数は切り捨てます。価格が1,000円未満である場合は、1,000円になります)

例:固定資産税2,000万円の土地と1,000万円の家屋を相続した場合
(2,000万円+1,000万円)×0.4%=12万円

この相続登記をする際の登録免許税は、固定資産税が非課税の土地や建物でない限り必ず発生します。登録免許税は不動産の価値が高いほど比例して大きくなっていきますので、例えば3億円の土地を相続した場合には120万円の登録免許税がかかってしまいます。しかしこの登録免許税ですが、通常相続以外の売買や贈与等の際には2%もかかってしまいますので、相続の時は非常に優遇されています。このため登録免許税がかかるからといって相続登記の手続きを後回しにするのではなく、相続のタイミングで登記をすることが非常に合理的であると考えて、相続登記をすることをお勧めします。

●司法書士報酬(自分ですればかからない費用です)
相続登記の手続きは司法書士に依頼することになります。相続登記の手続きは司法書士に依頼せずに自分で行うこともできますが、必要書類の収集や法務局とのやりとり、誤った相続登記の申請を行うと手戻りも発生しますので、予想以上の負担やミスによるリスクを失くすためにも司法書士に相談ことをお勧めします。相続登記の司法書士報酬は、現在は自由化されています。不動産の数が増えれば司法書士報酬も増額していきますが、同じ地域にあるのか、複数の都道府県に点在しているのか等、様々な条件によって報酬が変動しますので、詳細は司法書士に確認するとよいでしょう。

相続登記に必要な書類一式

それでも相続登記を自分でやってみたい方に、法務局のHPに必要な書類が記載されているリンク先を案内いたします。先ほどの3パターンで使用する書式が異なりますので注意してください。
遺産分割協議通りに相続登記
数次相続が発生していない
数次相続が発生している
※数次相続とは、被相続人の遺産相続が開始したあと、「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに相続人のひとりが死亡してしまい、次の遺産相続が開始されてしまうこと
●遺言の内容通りに相続登記
公正証書遺言の場合
自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合※家庭裁判所での検認が必要です
法定相続分通りに相続登記

この登記申請書の作成とするとともに、必要書類の収集が必要となりますが、相続の登記申請事務手続きに慣れていないと、揃えて申請はしたものの、不備が見つかっての再申請や、資料の再収集などかなりの手間や時間がかかります。事前に法務局の登記相談で十分な準備をすることをお勧めいたします。

その他に必要な書類
相続登記の対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
法務局(登記所)で取得します。全国どこの法務局でも取得できますが、所在地等の対象不動産の基本情報が必要となります。不動産の地番情報があれば誰でも取得できるものです。よく地番と住居表示○丁目○番〇号を勘違いされる方がいるので注意しましょう。
●被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)
被相続人が亡くなった後に住民票から除外されたものです。相続人であれば故人の最終住所の市区町村役場で取得できます。
被相続人(亡くなられた方)の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
被相続人の法定相続人を確定するために必要な書類です。被相続人の最終本籍地の市区町村役場で(改製)原戸籍謄本及び除籍謄本を取得し、本籍地の移転が過去にあれば、該当地の市区町村役場に遡りながら(改製)原戸籍謄本を取得していきます。出生まで遡る必要があります。
被相続人が本籍地異動を複数回行っている場合には取得手続きが大変になりますが、必ず必要な書類となりますので、司法書士等の士業専門家に取得代行を依頼することも検討しましょう。
相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人の本籍地を管轄する市区町村役場で取得します。相続人自身のものですので取得は難しくありません。また被相続人のように出生時まで遡る必要はなく、最終本籍地の戸籍謄本のみで問題ありませんが、遠方に住まわれていたり、分割協議に難航した場合、相続人の協力が得られず、いたずらに時間が過ぎていく場合があるので注意が必要です。
遺産分割協議書もしくは遺言
遺産分割協議書は相続人全員の遺産分割協議の結果、作成される書類です。相続人がひとりだけのケースと、遺言を用いて相続登記をする以外は必要となります。
相続人全員が実印で押印したうえで、印鑑証明書を添付する必要があります。遺産分割によらず、遺言によって相続登記を行う際には(検認済みの)遺言を法務局へ提出します。
相続人全員の印鑑証明書
相続人が遺産分割協議書に押印した実印を証明する印鑑証明書が必要です。相続人が各自市区町村役場で取得します。なお法定相続分どおりの登記の場合や相続人がひとりの場合には印鑑証明書は不要です。
物件を取得する相続人の住民票
対象不動産を相続する相続人のみ住民票が必要となります。
固定資産評価証明書
不動産が存在する市区町村役所で取得します。

登記申請をする際の三つの方法について

ここまで相続登記の手続きに必要な書類の作成方法及び内容を説明してきました。ここからは実際に法務局に相続登記の申請をする際の三つの方法を解説していきます。

①法務局の窓口で申請する方法
②郵送で申請する方法
③オンライン申請する方法

それでは各方法について詳しくご説明いたします。

①法務局の窓口で申請する方法
法務局の窓口で申請する方法のメリットは、窓口で相談ができますので誤りがあってもその場で対応することができ安心という点です。必要書類が足りない場合は、再度必要書類を入手して再提出の場合もあります。
デメリットとしては法務局の開庁時間に実際に足を運ばなくてはならない点です。管轄の法務局に書類一式と「申請書に押印した印鑑」を持っていくようにしましょう。法務局に行くと「不動産登記係」という窓口がありますので、不動産登記係(課)を探しましょう。
また法務局の窓口で書類を提出してもすぐに相続登記が完了するわけではなく、登記完了予定日が設けられることになりました。通常、登記申請書類一式を受け付けた後、1週間~10日後が登記完了予定日となります。登記完了予定日が到来しましたら法務局に登記完了の書類を受け取りに行って、手続き終了となります。
登記完了予定日に法務局に持っていくもの
登記完了予定日になりましたら次のものを持って法務局に行きましょう。
・登記申請の際に使用した印鑑
・身分証明書
・受付番号をメモした用紙(あれば)
・法務局から指示があった書類(あれば)
登記完了予定日に法務局窓口で受け取ることができる書類
法務局の窓口で相続登記完了日に受け取ることができる書類は下記のものとなります。
・登記識別情報通知書:不動産ごと、申請人ごとに1通ずつ発行されます。
・登記完了証:登記が完了したことを証明する書類です
原本還付書類一式:相続登記申請に使用した原本を還付してもらえます。戸籍謄本等も返却してくれますので、銀行預貯金解約等の別の相続手続きで戸籍等が必要な際にも使用することができますので覚えておきましょう。
相続登記の完了証を入手したら、念のため登記事項証明書(登記簿のこと)を取得して内容に誤りがないかを確認しましょう。

②郵送で申請する方法
準備した書類一式を法務局に郵送すれば、窓口に足を運ぶことなく提出することができます。ただし重要な書類ですので普通郵便ではなく、必ず「書留郵便」で送ることを忘れないでください。
また法務局に書類を持参する際には「申請書に押印した印鑑」を持参するように紹介しましたが、正確には万が一書類に不備があった際に申請書に押印した印鑑を訂正印として使用するためです。書類に不備がなければ印鑑を使用することはありません。郵送で申請した場合、窓口と異なりその場で誤りに対応することができなくなりますので、後で不備があった場合にスムーズに対応できるように申請書に申請者全員が捨印を押しておくと安心です。
また登記完了予定日が窓口持参の場合と異なりその場で分かりませんが、今では多くの法務局がホームページ上に登記完了予定日を掲載していますので確認するとよいでしょう。仮に登記完了予定日が分からなくとも、申請から余裕を見て2週間程度してから窓口に行けば完了書類を受け取ることができるでしょう。
さらに申請だけではなく、完了書類を郵送で受け取ることもできます。具体的には登記申請書類に次のような表記をしておきます。アンダーラインの部分が郵送で登記完了書類を受け取りたい場合の表記方法です。

<登記申請書より抜粋>
登録免許税 金●●●●円

その他の事項
送付の方法により登記識別情報通知書及び登記完了証の交付、原本還付書類の返還を希望します。送付先の区分 申請人の住所

不動産の表示
福岡県福岡市東区香椎●●○丁目○番地

このときの注意点ですが、申請書類と併せて「返信用封筒と返信用の切手」を同封することを忘れないようにしましょう。返信用封筒を同封することで、窓口で受け取ることができる完了書類一式と同様の書類を郵送で入手することができます。

③オンライン申請で相続登記する方法
認知度は低いですが、自宅にいながらオンライン申請で相続登記することもできますが、パソコンの設定や電子証明書の取得をしなければならないため少し手間がかかります。司法書士など登記申請業務が多数ある方には便利かも知れませんが、人生に数度の登記申請にオンライン申請は合理的ではないかも知れません。
それでもオンライン申請に興味のある方は、法務省のHPからご確認ください。

最後に

相続登記は以上のように、自分で出来ないことはありませんが、かなりの手間と時間がかかります。相続の手続きには他にもやらない事も多々あり、期限が限られているものもあります。普段の日常生活を過ごしながら、このような手続きが可能かどうか、まずは司法書士さんに見積もりを依頼して検討することをお勧めします。福岡県内の司法書士さんや司法書士法人さんは福岡県司法書士会のHPから検索できますので、お近くの司法書士さんや司法書士法人さんにお問合せください。ご不明な点があれば、福岡市東区の香椎相続不動産事務所へお気軽にお問合せください。

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