法務局における遺言書の保管制度について

法務局における遺言書の保管制度について

約40年ぶりの相続法制の大幅な見直し

日本全体で1年間に約50兆円規模の遺産が受け継がれていく「大相続時代」となり、政府も相続問題に関する現状を踏まえて、相続や贈与に関する様々な制度の改正を行ってきています。遺言に関しても、2020年7月10日より法務局における遺言書の保管の制度などが始まりますが、今回は自筆証書遺言に関する見直しについて記したいと思います。

せっかく遺したはずの遺言がトラブルの元になる事もある

今後、さらに増えると思われる相続問題を避けるために、遺産を残す方(被相続人)には是非、遺言を残して欲しいと願うのは、私を含めて相続問題に取り組む人達の最たる願いです。しかしながらせっかく遺した遺言がトラブルの元になる事もあります。詳細は自筆証書遺言の正しい書き方をご確認ください。

遺言の種類について

せっかくの遺した遺言がトラブルにならないためのポイントは、後ほどご説明するとして3種類ある、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言についてのメリットとデメリットをご説明いたします。

①自筆証書遺言・・・自筆証書遺言のメリットとして、遺言の全文、日付、氏名を自署し、押印することで成立する、一番手軽に作成できる遺言です。作成にあたって役所に届出などを行う必要はなく、被相続人がひとりで作成することも可能です。
デメリットとして、手軽に作成できる反面、専門的な知識がないままでは、遺言として必要な事項を全て盛り込んだ不足のない遺言書を作るのは、難しい可能性があります。遺言の内容に不備があった場合、遺言書として認められない場合もありますので、事前に相談してから書かれることをお勧めします。
また、この自筆証書遺言は保管も自分で行えるため、紛失や保管している事を知らずに、遺産分割協議終了後に遺言が出てきてトラブルになったり、家庭裁判所の検認を受けずに開封して無効になったりする可能性もあります。
今回の法改正で、上記のようなデメリットを解消できる仕組みとなりましたので、後ほどご説明させて頂きます。
自筆証書遺言の正しい書き方

②公正証書遺言・・・公証役場で公証人に作成してもらう遺言書のことです。公証人が被相続人から口頭で要件を聞き取り、確認をしながら作成するため、内容に不備がある可能性は極めて小さくなります。また、被相続人を公証人、さらに証人ふたりが立ち会って公証役場で作成を行い、被相続人を証人ふたりの署名を押印を受けるので、法的にも十分な保証が与えられています。
また原本は公証役場に残され、被相続人の手元にはコピーが渡されるため、紛失や書き換えの心配もありません。作成の時点で原本の信頼性が保たれているため、家庭裁判所による検認も不要です。
デメリットとしては、公証人への報酬等、作成に一定の費用と手間がかかりますが、確実な遺言を行いたい人に適しています。

③秘密証書遺言・・・内容や場所ともに秘密にしながら、作成の記録と証人を残しておく遺言です。まず被相続人が遺言書を記載しますが、署名と押印があれば、自筆でなくパソコンや代筆でも問題はありません。
作成した遺言書は封筒にいれて、遺言書に押印した印鑑と同じもので封印をして、公証役場へ持参します。公正証書遺言と同様に、ふたりの証人の立会のもと、公証人に提出します。
その際に、被相続人の氏名・住所と、代筆であれば代筆者の氏名を住所を伝え、公証人は、遺言書が本人のものであると確認したら、住所と氏名、日付を記録し、そこへ遺言者と公証人、証人が署名と押印を行う事で遺言が完成します。
秘密証書遺言は、遺言の内容が本人以外に知られることがなく、また公証役場で手続きを行うため、「秘密証書遺言を作成した」という事実が記録されます。そのため、遺言の内容は秘密でも遺言の存在を公証してもらえるので、検索も可能となり、相続人が遺言書を探しやすくなります。
但し、自筆証書遺言と同じく、遺言書として必要な事項が漏れる可能性があるので、確かな信用が得られる記載をしないとのちのちトラブルのもととなる可能性があります。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

上に記しましたが、あらためて自筆証書遺言のメリットとデメリットについて記します。

自筆証書遺言のメリット

  1. 自分だけで遺言を作成できるため、基本的に費用がかからない。(紙とペンと印鑑があれば足りる)
  2. 自分の好きなタイミングで遺言を書くことができる。
  3. 誰からの関与も受けずに遺言を作成可能なので、隠しておけば秘密を保つことができる。

自筆証書遺言のデメリット

  1. 遺言の書き方に誤りがあると無効になるため、記載事項に誤りがないよう注意する必要がある。
  2. 自分自身で遺言を保管しなければならないため、紛失する恐れや発見されない恐れ、さらには悪意ある相続人に破棄等される可能性がある。
  3. 自署で作成するとはいえ、悪意ある第三者に遺言の内容を改ざんされる可能性がある。
  4. 亡くなった後に、遺言を家庭裁判所に持っていって検認を受ける必要がある。

法務局による自筆証書遺言の保管制度のメリット

2020年7月10日に施行が予定されている、法務局による自筆証書遺言の保管制度は、これまでの自筆証書遺言の作成におけるデメリットを解消できる仕組みとなっており、そのポイントを以下に記します。

  • 自筆証書遺言作成した方は、自ら法務大臣の指定する法務局にて手続きをすることにより、遺言書の保管(原本保管・画像データ化)を申請することができます。その際に、本人確認や自筆証書遺言の適合性(署名・押印・日付の有無など)を外形的に確認されます。※遺言の内容の整合性等については確認されません。
  • 遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。
  • 遺言者の死亡後に、相続人や受贈者らは、全国にある遺言者保管所において、遺言書が保管されているか調査(「遺言書保管事実証明書」の交付請求)でき、遺言書の写しの交付を請求(「遺言書情報証明書」の交付請求)することができ、また遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することも出来ます。

今回施行予定の法務局の自筆証書遺言の保管制度により、自筆証書遺言方式による外形的な適合性や、自筆証書遺言の原本性の確保、そして検認が不要になることにより遺産分割協議の早期開始が見込まれます。

詳細は法務局のHP「 法務局における遺言書の保管等に関する法律について 」
「法務局における遺言書の保管等に関する法律についての概要 」 についてご確認ください。


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